食事と休憩を経てエミリオ等は明るい坑道を進む。時折例の強風は吹くが、精神的な障害が無くなったロニにとってはそよ風と同じだった。
「ふふん、怖かったら俺の後ろに隠れてもいいんだぜ?」
「肉壁か、殊勝な事だな」
「何故だろうな、お前が言うと嫌な予感しかしない」
「適材適所だろう」
相変わらずのやり取りをするロニとユダの様子を見て、ふとジョブスは呟く。
「見るだけなら良いコンビっぽいんだけどな」
「勘弁してくださいよ……俺の相棒はカイルだけで充分です」
「ご指名だぜ? カイル君」
「嬉しいけど、ユダとも仲良くしないと駄目だよ?」
真面目な顔で窘められたロニはゆっくりと相棒から視線を外し、代わりにリアラがカイルに笑顔を向けた。
「カイルは優しいのね」
「え、そうかな?」
「ええ」
すぐに頷き彼女は言葉を続ける。
「カイルのそういう所、素敵だと思うわ」
「……あ、ありがとう、リアラ」
照れ臭いのかカイルは頬を掻きながら礼を言い、リアラも口元を押さえながら俯いてしまう。しかし二人が離れる事は無かった。
周りから見ても少々気恥ずかしい少年少女の雰囲気にロニが反応しない筈がなかった。ついでにジョブスも感情の無い笑いを溢す。
「えっ……なにこれ甘酸っぱ……」
「わぁ……青春だなぁ……」
「目が死んでるぞお前達」
羨望に近い目の彼等に鋭く指摘したエミリオは、この流れに交わらぬ青年が何か考え込んでいるのに気付いた。
「どうした?」
「え? ……あ、いや……」
我に返ったらしい彼は言葉を濁す。それは今に始まった事ではないのであまり気にしない様にすると、ユダは珍しくそれを打ち明けた。
「青春って、何だろう」
「……さて、縁が無かったから分からんな」
特に意味が無いような疑問、だがエミリオはユダという人物の一端を見た気がした。