「問題無く供給されているみたいだな」
「じゃあロニがユダの背中にくっつく必要が無くなるのね」
「んー? おいおいリアラ、それじゃあ俺がまるで幽霊にビビってたみたいな言い方だぞ?」
「え、事実でしょう?」
真っ直ぐな瞳に反論出来ないのかロニはゆっくりと顔を背け、それに対し何も言わなかった、リアラは。
「坑道の明かりを落とす事も可能なんだがな」
「いやいやいや駄目だろそれは!? 何の為に地下に行ったか分かんねェし、これから坑道に入る人が可哀想だし、何より俺達が危ない!」
「そうだな、また背中に貼り付かれても迷惑だしな」
「お前の性格の悪さを逆に尊敬出来るぜ……!」
睨むロニなんぞ気にも止めずユダは操作を続けた。すると明かりは更に光を強くし、皆天井に注目する。
「これだけ明るければ幽霊も何も無いだろう。坑道内のモンスターも眩しくて動きが鈍るだろうしな」
「そいつは願ったり叶ったりだけどよ……エネルギー量とか大丈夫なのか?」
「光源にしか使っていないみたいだからな、問題無いと思うが」
「つまり、余ってると」
理に敵っている、皆がそう思った矢先彼は小さく呟いた。
「だからといって、別の用途に使う事が必ずしも正しいわけではないが」
「おい」
「コレは大丈夫だ、そもそもエネルギーの使用効率を研究する為のだからな。この機器だと寧ろ使った方が負担は掛からないだろう」
「へえ、そういうモンか」
素直に感心するロニの隣で、リアラが考え事をする彼に言った。
「本当に、ユダって機械に詳しいのね」
「基礎の知識があれぱこの程度雑作もないだろう。僕はその基礎があっただけの事」
「基礎……でも、それを応用出来るのは、やっぱり才能だと思うわ」
何か思う所があるのか彼女は難しい顔でペンダントに触れる。しかし駆け寄ったカイルにより熟考には至らなかった。
「ユダ、すっごい明るいね!」
「明るくしたからな。まあ、あの風の音ばかりはどうにも出来ないが」
「大丈夫だよ、だってノイシュタットにエミリオさんが紹介したい女の人が居るんだし」
「どうしてどいつもこいつも俺を弄り倒そうとするんだ」
ロニの疑問に答えたのはやはりカイル。
「そりゃあ、ロニだからだよ」
「うん? 哲学か?」
「そんな崇高な物でもないだろう」
手厳しくユダが指摘するとリアラが肩を震わせた。気がその理由は当然笑いを堪える為であり、ジョブスも笑いを噛み殺しなんだら青年の肩に手を置きフォローする。
「愛されてる、愛されてるなァ、ロニ君は」
「俺は褒められて伸びるタイプなんですよ」
「俺だってそうさ。でもどっかの天の邪鬼に邪険にされてもこうして元気だから君も大丈夫だって」
「誰が天の邪鬼だ」
いつの間にか後ろに立っていたエミリオに特に驚く事も無くジョブスは堂々と言ってのけた。
「忙しいだろうに、人の誕生日にわざわざ手渡しでプレゼント渡しにくる様な御仁じゃないですか?」
「会議のついでと言っただろう」
「プレゼント持って会議」
「やかましい、催促したのはお前だろうが。あんな高い物手渡しじゃないと安心出来ん」
エミリオが深い溜め息を吐くと不思議そうにロニか質問する。
「高い物って、何あげたんです?」
「既に絶版になっている本だ。……そういえば、まだウイル貸してるのか?」
「そーですねー貸しっぱですねー」
「……ウイルの嫁は読書家らしいな」
この話の流れの答えを口にするとカイル以外が察した。ロニは溜め息を、リアラは苦笑いを、ユダは一度エミリオを見た後彼に歩み寄る。
分かっていないカイルにロニとリアラが説明し、それをジョブスが笑っているが、青年の珍しい行動に談笑が続きつつもそれに注目が集まった。