「……何があった」
離れた所から若者達の様子を見ていたエミリオかジョブスに問う。
「持病、らしいですよ、本人が言うには。確かに発作ぽかったし……胸の」
「胸……」
潜めた声の内容に感じたのは小さな胸の痛み。
「カイルが居なかったら一発貰ってましたね彼、一瞬だったとはいえ周りも自分も見えなくなってたし。治療方法が無いから放置してる、だが問題は無いという申告でしたけど」
「そんなモノ当てにできるか。問答無用だ、以後ユダは後方支援に徹底させる」
「それが最善策ですよねェ……ロニが説得しても首を縦に振らなかったんですけども」
先程の地下から聞こえたのはその事だったのだろう。その様子は容易に想像出来るし、ユダが応じないのも当然とも思えてしまう。
そして、まるで“彼女”の様だとも。
「爆弾持ちだったか……」
「どうします?」
「今更置いていくわけにもいかないが……そうだな、街に着いたら医者だな」
「ですよねー」
良い考えだと笑顔を浮かべるジョブスだが、すぐに深い溜め息を吐く。
「でも、大人しくしてくれますかね?」
「……しないだろうな」
「バレるからなァ……どうしたものか……」
「無理強いして好感度下げるのも得策ではないか……」
二人の頭を悩ませる元凶はサンドイッチを片手に機械を操作しようとしカイルに窘められ、ロニとリアラに軽く笑われていた。
和やかなその様子にジョブスも吹き出す。
「何となく不愉快だな」
「だって、総帥と同じ事してるから」
「……仕事熱心なだけだ」
「自分で言いますかね」
全く悪びれた様子が無い事に呆れるジョブスだが、その裏に秘めた物を感じ取りそれ以上は何も言わなかった。
「医者に相談くらいはしてみるか……」
「ですねェ……もうちょっと素直な子だったらな」
「……何故横目で私を見る」
「さて、何でだったか」
敢えて言わずに濁しエミリオの眉間にシワを作った彼の傍にやって来たカイルは空きが目立つ弁当箱を差し出す。
「はい、これジョブスさんの分」
「お、ありがとな。ユダの様子はどうだ?」
「大丈夫に見えるけど……無理はしてほしくないなぁ」
カイルと共に改めてユダを見ると、彼は機械の操作をしながら何やら話していた。