機械からではない小さな音が聞こえ、それが少しずつ近付いているのに気付いた二人は地下への入り口で耳を澄ませた。
『ーーから、お前がーー』
『だからーーだいなーー』
声はロニとユダのモノ、雰囲気からは何やら意見の相違が感じられる。
『問題はーーだろ、さっきのアレーー』
『ーーといてくーー自己かんーー』
何時もの事ではあるが、ロニの語気が何時もより少し強く感じた。明かりは点いているが、地下で何か問題外起きたのだろうか。
入り口を見下ろしていると、先ず金色の髪が視界に入った。
「あ、エミリオさんっ、リアラっ」
挙げた顔は笑顔、それに続いて他の三人も姿を現す。
「おー点いてるみたいだな」
「当然だ」
「寒いから早く上がろうや。最初はカイル君ね」
「はーい」
ジョブスの指示に従いカイルは地上を目指した。高い金属音を一定の間隔で響かせ、最後はエミリオの手を借り無事に帰還を果たす。
「お疲れ、無事に済んで何よりだ」
「あっ……あ、うんっ、皆が一緒だったからね」
嘘が苦手な少年から予想通りのほんの一瞬だけ口ごもるという反応が返ってきた事に、エミリオはこれからについて頭の隅で考え始めた。
地下で何があったのかは分からないが、先程の声を考えると中心人物はユダで間違いないだろう。ロニが語気を強めていた事を合わせて考えると、決して流せない出来事が起きたという事。
その詳細はすぐに分かるだろうとユダ、ロニ、ジョブスの順に手を貸し、全員怪我が無い事を確認しようとしたがすぐに止めた。
「カイルがピンピンしてるなら、大した怪我は無いか」
「あー……納得……」
リアラさえ納得してしまう“カイル”という基準、本人はよく分かっていないが。
先程の口ごもりには触れず、エミリオは弁当箱を手にした。
「あ!」
「お待ちかねだぞ、カイル」
目を輝かせる少年に弁当箱を渡すと、彼は先ずロニにサンドイッチを渡す。次にリアラに渡そうとするも恥ずかしがりつつ断られ、それからいつの間にか機械の前に移動していたユダに駆け寄った。
「はい」
「……僕は要らない」
一瞥もせず断るが、それでカイルが引き下がるわけがない。
「ダメだよ、体調悪い時はちゃんと食べなきゃ」
「だから……それは……」
反論が出来ない、彼の言葉は正論だから。
カイルの言葉を聞いて心配そうに駆け寄るリアラに続いたロニが笑う。
「だよなー、自己管理出来る奴はちゃんと飯食べるもんなー」
「…………」
反論の余地は全く無い、ユダ自身にもその言葉が存在しない事が俯く表情から見てとれた。
しかしそれでも首を縦に振らない彼にカイルが笑顔で告げる。
「それにユダ、リリスさんのご飯好きでしょ? 次は何時食べられるか分からないからさ、後悔しないように食べなきゃだよ」
「……!」
一瞬だけ見られた眼の動揺に気付いたのはカイルとリアラ以外の男性陣。
一拍の間を置いた後、ユダはサンドイッチに手を伸ばした。