「べつにカイルだって何でもかんでも喋るわけじゃないだろう」
「えっ?」
もう何度目かも分からない彼に対する驚き、彼の対応も変わらずだった。
「全部正直にとは言うが、アイツだって隠し事をするし、嘘だって吐く。ただそれが人一倍下手なだけだな」
「……な、なるほど」
思い当たる節はある、無くても納得出来る。それほどにあの少年は“分かりやすい”、本当に目の前の英雄の親族なのか疑問に思ってしまう程に。
しかし彼は前に言った、“カイルは父親似”だと。
「確かに羨ましくはあるがな、時と場合による」
「でも……私、カイルより沢山隠し事してて……」
「沢山隠し事をしているから信用出来ないというわけでもないだろう。じゃなかったらスタンは勿論、お前や名前すら分からないユダを信用しているカイルも真に救いようの無い馬鹿だし、そんな奴を信用している私の立場はどうなる、一応企業のトップだぞ」
苦々しく、だが楽しそうにエミリオは反論する。今は分かる、家族の話をするのが楽しいのだ。
そこでふと、リアラの脳裏に疑問が過る。
「私……」
カイルの事を信用しているのだろうか。旅を続ける為の都合の良い存在とおもっているのではないだろうか。
否定したくも離れない嫌な感情が少女の心に生まれる。
「どうした?」
「あ……いえ……」
こんな事を言ったら相手を不快にする。目に見える結果に言葉を濁すとエミリオは視線を暗い天井に向けた。
「まあ、信用するだのしないのしてほしいだの、結局は自己満足でしかないのだろうがな……それを悩まなくてはならないのだから人間は面倒で仕方ない」
今度はこれまでの言葉を否定する様な事を言う彼にリアラは驚きさえ忘れる。