「いや、大した問題ではない、が……確かに、後遺症には違いないだろうな」
手を握り、開くと、震えは止まる。しかしリアラの不安げな表情は変わらない、当然だが。
エミリオは溜め息混じりに打ち明けた。
「地下空間というモノが駄目でな、意識しないとこうなってしまう」
「えっ……それって……?」
「分かりやすく言えば、トラウマというヤツだ」
今度は苦笑混じりに、対する少女は驚きを隠せないでいた。
「エミリオさんが、トラウマ……?」
「これでも一介の人間のつもりだが?」
「あっ……ごめんなさい……!」
失礼な事を言ったとすぐに自覚し頭を下げるとエミリオは小さく笑う。
その反応の意味が分からないリアラは、ふと首を傾げた。疑われてもおかしくない立場の少女に己の弱点を教えたのだ、何の考えもなくそんな事を彼がする筈がないと思うと尚更分からない。
そんな疑問に気付いたのかエミリオがまた笑った。
「隠したまま変に勘繰られるよりかは、いざという時に対処がしやすいんじゃないか?」
「いざという、時……?」
「それは自由に想像したらいい」
彼の笑みから読み取れるモノは何も無い。単なるからかいか、深い疑念か、手掛かりの為の手掛かりすらそこには無い。
どうして分からないのだろう、甥であるカイルならば分かるだろうか。性格こそ全く違うが、家族であるあの少年にならば、彼は教えるのだろうか。
他人である事を今更ながら改めて自覚したリアラの口は勝手に呟いた。
「カイルみたいに全部正直に話せたら……」
何か違っていたかもしれない、もっと信用を得られていたかもしれない。
言葉にしてしまった事と、 変えられない後ろ向きな考えに今度は溜め息が漏れた。