開いたままの地下への扉を暫し見つめた後、エミリオは部屋の隅にあったパイプ椅子を二つ広げ並べた。やや古い金属の軋みが聞こえたが座る分には問題無い筈なので、リアラと共に彼はそれに腰を降ろす。
「カイル達、大丈夫かな……」
無意識にそうリアラが呟けば、エミリオは地図を確認しながら答えた。
「現役の軍人が居るんだ、引き際を誤る事は無いだろう。だか強いて言うなら、ロニとユダが喧嘩しないかどうか……」
「あー……それは……」
これまでの事を振り返れば当然抱く心配事。双方大人だが相性が良くないのか、良い関係とは言い難い。
状況を考えれば流石にそうそういがみ合う事は無いだろうが、無いとも言い切れないのが現実。
「大人だから、流石に喧嘩する事は無いと思うけど……」
「それを差し引いてもあの二人ではな。まあ、カイルが上手く取り持つとは思うが」
「そうですね……」
静かでひんやりとした空気、帰りを待つ少女は自分の手を軽く握り温めた。地下はもっと寒く水もある、彼等は寒い思いをしていないだろうか。
心配と同時にもしもの時の為に周りを意識していると、隣の彼の手が震えている事に気付いた。
「エミリオさん……何処か怪我を……?」
流石に身体が震える程の室温ではない。
ならば此処まで来る道中、もしくは過去の怪我等による後遺症。瞬時に過った可能性に対しエミリオは自分の手を見て、強くそれを握った。