共同作業を始める二人の青年を静かに見ていたカイルはジョブスに声を掛けた。
「なんか、ユダ楽しそう」
「そだな、好きなのかもな機械弄るの」
実際好きかどうかは定かではないが関心以上の何かがあるのは聞こえる会話の温度で分かる、先程の一触即発の空気を考えれば尚更。
「俺も機械に詳しかったらな……」
「あー共通の話題って大事だよな、分かる分かる」
カイルの倍以上の時間を生きてきた彼は沁々と語る一方で、鞘に収めた剣を肩に置きゆっくりと首を横に振る。
「でもそれはキッカケにしかならんのさ、関係を深めたいなら自分には無い物を理解しないとな」
「無い物……」
「難しい考えるこたないさ。リーネで知らない事知って、リアラちゃんと仲良くなったろ?」
ジョブスが言った体験を思い出しカイルは嬉しそうに笑った。仲良くなれた、その事実が心の底から嬉しいのだ。
しかし同時に彼は、首を傾げていた。
「うーん……よく分かんないから、ユダが困ってたら助ければいっか。ユダにしか分かんないの考えても仕方ないし」
「君って時々凄い大人だな……」
「え、俺大人?」
「時々な、時々」
期待の眼差しを受け流すジョブスの脳裏を過るのは、互いを理解し背中を預け会う二人の英雄の姿。真っ直ぐな男と、捻くれた男、対極の位置に立ちながら道を交える二人。
その双方どちらもの流れを持った少年は、彼なりの答えを抱きながら憎まれ口と共に作業を続けるロニとユダを見守った。