戦闘が終わり、術の余韻である冷気が徐々に薄れていく中カイルが深く息を吐くユダに駆け寄る。
「ユダ、大丈夫!?」
「……大したことはない」
「ホント? ずっと辛そうじゃなかった?」
「そんな事」
無い、その言葉をジョブスが遮った。
「この状況で否定は流石に無いだろ」
「……そうだな」
誰もが分かる無意味を彼は認める。
「単なる持病だ。完治する見込みました無いが、死に直結するようなものでもない」
「えっ……」
彼らしい冷たい言葉での告白にカイルとロニのは言葉を失い、ジョブスは眉を潜める。
「しょっちゅうか?」
「いや……最近は、そうでもなかったんだがな」
「そうか……予防策は?」
「……特に無いな、薬も無い」
まるで他人事の様にユダは質問に答えていた。言い換えれば諦めとも取れるその様子だが、正しく他人でえるカイルには決して他人事ではない。
「なんで言ってくれなかったの」
「言っただろう、最近は問題無かったと」
「でも、最近はでしょ? これからどうなるか分かんないんでしょ?」
「……まあ、な」
少年の言葉は正しい、だから変えず言葉は非常に少なかった。
二の句か継げない青年に溜め息を吐いたのはロニ。
「素性を明かさない上に、周りを巻き込みかねない事を黙ってたなんてな」
「フン……なら文句は僕を同行させた奴に言うんだな」
「なんだと」
「僕が信用度するに値しない男だというのは分かりきってる事だろう?」
隙を見つけたと言わんばかりに鋭く言葉を返すユダだが誰とも目を合わせる事は無い、まるで何も悟られまいとしているかの様に。
地下水脈という空間での重い空気、このままではいけないと皆が思っている中で口を開いたのはジョブスだった。
「はいはい喧嘩は明るいトコでやろうぜ? 今やるべき事は分かってるだろ?」
問われ三人は頷き、ジョブスを先頭に更に奥へと進む。先頭のすぐ後ろにはユダ、その後ろをカイルとロニが歩く。
「ロニ……怒ってる?」
「怒ってねー……わけではないか……悪いな、心配させて」
「ううん……あ、あのさ、ユダの事、疑ってる……?」
問いの意味は疑心から生まれたものではない、仲間を想う純粋な気持ちによるもの。疑えない彼だからこその問い掛けだった。
しかしロニは、それに応える事が出来ず溜め息を溢す。
「どうなんだろうな……謎が多過ぎて何ともな」
「うん……それは、俺にも分かるよ? でも、ユダは敵になってほしくて隠し事してるわけじゃないと思う」
“隠し事”、青年の背に一瞬悪寒が走った。
「いつか、話してくれるかな……」
“いつか”、そんなモノが来なければいいのにと願ってしまう彼にジョブスから声が掛かった。
「着いたぞー、ちゃんと警戒しろよー」
我に返った視界に広い空間が映った。当然明かりは点いており、整備された水路に機械の土台を持つ大きな水車が回っている。