明るい雰囲気のまま彼等は暗い動力室へと戻り、再度闇に目を慣らしながらジョブスが改めて地下への扉を開ける。
「明かりがあるはとはいえやっぱり下は危ないよなー、どうよユダ君」
「長居するべきではないのは確かだな」
冷静な声で言ったユダは、今度は自らエミリオを見た。
「アンタとリアラは此処に残れ」
「何?」
「えっ?」
突然の話に目を細めるエミリオと驚くリアラ。対するユダは意見を曲げるつもりは無いのか視線を逸らす事無く理由を告げた。
「何があるか分からないからな……足下が崩れて全員で落ちてみろ、笑い話にもならん」
「なるほど、確かにそうだね」
「確かに、笑い話どころじゃないよなァ……」
納得するカイルとロニだが、リアラは相手の顔色を窺いつつ反論意見を述べる。
「でも、そうなったら私が力を使えば……モンスターも出るみたいだし……」
「それはいざという時までとっておけ、また倒られでもしたら迷惑だからな。それに此処には厳しい訓練を積んだ軍人が居るんだ、有事の際は率先して動いてくれるだろうよ」
「果たしてこれは頼りにされているんだろうか」
答えを求めるがカイルが空気を読み何も言わない程に場は静かで、ジョブスには渇いた笑いで濁すしかなかった。
「ま、まあ、回避出来る危険は回避するのが賢いやり方だしな? リアラちゃんみたいなか弱い女の子をこんな危ない所に連れてくのもアレだし。ね、総帥」
「……ああ、そうだな」
反論する理由は無い、だから当然エミリオはこの場に残る事を了承した。リアラもジョブスの言葉に多少戸惑いながらも頷き話は纏まる。
地下へ行く四人は出来るだけ身軽であるように必要な物だけを持ち、何時でも戦闘に転じられるように得物の確認を行った。
「カイル、滑って落ちたりなんかすんなよー?」
「大丈夫だよ、失敗は成功の元って言うだろ?」
「え、落ちたことあんの?」
必然的に最初に地下へおりる事になる軍人が驚愕しているとユダが冷ややかに笑った。
「そいつに学習能力があればいいがな」
「えー……」
「あるから大丈夫だよ!」
その自信が心配なのだと敢えて言わずにジョブスは、大人の対応として笑顔で地下での注意事項をカイルに伝える。素直に頷いてくれる彼に未だ不安が拭いきれないが笑顔を続けた。
「分かった人は手を上げてー」
「はーい!」
などという学校の様なやり取りの後カイルは叔父を見た。
「それじゃ、行ってきます!」
「ああ……気を付けてな」
ユダからの密かな視線に珍しく気付かぬまま、エミリオはリアラは共に慎重に地下へ降りていく彼等を見送った。