膝立ちで照明を確認するユダの下には岩盤に手を付くロニが居た。
「何事かと思ったぜ……」
「他に肩車を頼む理由は無いだろう」
「……そうだな」
「流石に安物は使わないか……」
球体ガラスを外しケーブルの接続部分を調べる表情は真剣その物で、非常に手慣れた様子に見える。
「ユダってこういうの詳しいの?」
「べつに、付け焼き刃程度だ」
「つけ……?」
言葉の意味が分からず首を傾げたカイルにエミリオが溜め息を吐く。
「一時しのぎの知識だという事だ」
「ロニのナンパ知識みたいな?」
「……一時しのぎにすらなっていないだろう、それは」
ロニの精神に大ダメージを与えてしまうのは分かっているエミリオだがわざわざ気にはしない、寧ろ自業自得だと思っている。そして追撃と言わんばかりに放心している彼の頭をユダが叩き、一つ奥の灯りの下に移動するように命じた。
「お前……もう少し労れよ……」
「いいからさっさと移動しろ」
「……俺の人権は……」
「人権が欲しいなら働け」
言葉だけ聞けばなんと傍若無人な事か、事実傍若無人ではあるが。
ロニは言われた位置に移動し、ユダはケーブルを調べる。その最中、手を止めた彼は腕を組み様子を見ていたエミリオに問う。
「コレの動力源は」
「外の風力と地下の水力」
「そのコントロールは」
「動力室で纏めて行っている。……行きたいのなら、案内するが」
その答えに軽い動きで肩から降りた青年は不適な笑みを浮かべた。
「僕がそれをどうこうするとは考えないのか?」
「さて、どうだろうな」
地図を片手にエミリオは牽制を受け流した後、ライトをリアラに渡した。そのライトで坑道の奥が照らされたが、暗闇の一言に尽きる上に相変わらず不気味な風の音が響く。
「この状況を改善してくれる可能性があるなら、部外者を入れても問題はあるまい。生憎私は機械に詳しくないし」
告げて響くあの音。
エミリオの目はユダ、ではなく彼の真後ろに立つ青白いロニを見ていた。
「そのままは嫌だろう、流石に」
「……そう思うなら引き取れ」
「了承する筈が無いだろう、暑苦しい」
ジョブスも全力で首を縦に振っている。
「……どうにかならないのか」
「私はもう、御愁傷様としか」
「…………」
カイルさえも向ける同情の眼差し、それがこの場の答えだった。