欠伸をし目を開けると部屋は暗かった。それが今が夜であるせいだというのは一目瞭然。
ベッドを下りカーテンを開け改めて夜を確認した後、深呼吸で感情を落ち着かせてから静かにドアを開けた。
『あ、カイルったらつまみ食いしたでしょっ』
『ロ、ロニも共犯だよ!』
『なっ、お前!』
聞こえる賑やかな声、不安になる一方で安心もする。
何かを振り払う様に首を横に振り部屋を出ると、小走りでカイルが現れた。
「あ、ユダ! もう大丈夫なの?」
「お前の心配が無駄である程度にはな」
「そっか、よかったー。夕飯出来たから呼びにいこうと思ってさ、一緒に食べる?」
何の疑いも無くこの少年は素直な笑顔を向ける。
ユダは言葉では答えず、カイルの横を通り足を進めた。その行き先が何処なのかすぐに分かった少年は笑顔で、多くは語らない背中に着いていく。
「今日はシチューなんだよ? ユダはシチュー好き?」
「べつに、好きでも嫌いでもないな」
「じゃあきっと好きになるよ! だって凄く美味しいんだから!」
その美味しいというのは料理の腕が良いと知っている故の言葉なのか、それとも純粋な味の感想なのか。
リビングに入ると、温かく優しいその匂いが鼻を掠めた。
「おはようユダさん、シチュー食べる?」
「……ああ」
皿を運ぶリリスに短く返しソファーに座る。その行動を見てロニが何か言いかけたが、すぐに開きかけた口を閉じテーブルに鍋を置いた。
漸く皆の前に現れた青年は窓の外を見ている。近寄り難い雰囲気を纏う彼に声を掛けたのはご機嫌な様子のジョブス。
「おはよーさん、体調はいい感じ?」
挨拶に対し何も返ってこないどころか視線さえ向けない。しかしジョブスの様子もまた変わらなかった。
「そんな機嫌もシチュー食べたらコロッとってな。カイル、シチュー美味かったんだろ?」
「はいっ、……あ」
間髪容れず頷いてしまった会社は皆の分のスプーンを持ったまま動きを止め、その背後ではおたまを片手にリアラが目くじらを立てている。
「カーイールー? サラダだけじゃなくてシチューまで……!」
「ロニも共犯だよ!」
「またかよ!」
「もうっ、2人共!」
まるで母親の様に少女は2人を怒っていた。