「×××××様、私に話とは?」
「なに大した事をではない。君のプライベートでの話を聞いてみたいと思ってな」
「プライベートですか?」
「ああ、君とあまり世間話をした事が無かっただろう?」
優しい笑顔の男性は少女の前に紅茶が入ったカップを置いた。
「口に合うだろうか」
少々自信無さげな言葉。少女はカップに口を付け、音を立てずに紅茶を口に含む。
「ん……美味しいです」
「そうか、最近淹れ方を習ったんだがなかなか難しいものだな」
「茶葉が違うだけで淹れ方が変わると聞きます」
「ああ、私には向かないと思い知った」
竦める肩には王から賜った勲章がある。だがその笑顔は朗らかで、勲章が与える筈の圧力は無い。
「×××とはどうだ?」
「どう……と言われましても、特に変化は無いかと」
「そうなのか? 2人で手合わせする時の雰囲気が以前と違うように感じるんだが」
「そう、なのですか?」
疑問に対し疑問を返せば、困ったように笑う。
「ああ、良い方に変わったと私は思う」
「えっと……その、具体的には……」
「ふむ……漸く互いをちゃんと見るようになった、か」
聞いても分からないと表情が語る。
「分からないか?」
「はい……つまり、どういう事なのでしょう」
「何れ分かる時が来るだろう。今はあまり意識せず、有りのままの君で過ごせばいい」
「有りのまま……」
小首を傾げ、優しい笑顔の男を見た。