「俺は晶術使えんからなァ……ああいう手合いはホント苦手、軍人止めたくなるくらい苦手」
「でもジョブスさん、ウイルさんと一緒に七将軍に推薦された事ありましたよね」
「いや、確かに出世したいとは言ってるけどな……いきなり将軍は無いわ」
「そうですかね、ウイルさんもジョブスさんも滅茶苦茶強いじゃないですか」
同意を求めてロニがエミリオを見ると、彼は曖昧気味に頷いた。
「実力は申し分ないがな……性格が両極端過ぎるのがな」
「だから2人まとめての推薦なんでしょうけどね、……ワンセットである内は将軍なんてなれねェや。それに七将軍になったら総帥からかいに行く暇が無くなっちゃうしねー」
「仕事しろ税金泥棒」
「給料分はちゃんと働いてますって」
軍人としてその発言はどうなのか。しかしエミリオが何も言わないからなのかロニは笑うだけ。
笑われたジョブスは不適な笑みを返し、そして大人の顔をする。
「俺には下請けがピッタリなんだってな、前に立って部隊率いるとか無理無理。まあだからといって? どっかのあしながおじさんみたいにこそこそとも出来んけど」
“あしながおじさん”の返しは速い。
「同僚の恋路を影から支えていた奴がよく言う」
「な、何の事ですかねェ、俺は彼女が可愛いから声を掛けただけであって……」
「ロニ、いい奴なのに婚期を逃すというのは正にコイツの事だ、参考程度に覚えておけ」
人生論の先輩の言葉に頷くロニ。参考にされたジョブスは早くも大人の顔が崩れ去った。
「哀れんでくれるなら女の子の一人でも紹介してくれたらいいんじゃないんですかねェ」
「日頃の行い」
「言うと思ったわ、そんなに素行悪いかね俺は」
「それでも好きになってくれる女を見つけろ、国籍を問わなければ一人くらい居るだろ」
砂糖を追加した彼の言葉に年上である筈の男は難しい顔をする。
「慰められてるのか貶されてるのか分からん」
「どちらもだ」
「器用で結構。ロニ君、君はこういう偏屈になっちゃ駄目だぞ、周りが大変だから」
今回ばかりは素直に頷けず、更に眉間にシワを作っているエミリオに困っているとリリスが空の皿を持って戻ってきた。
「あらあら、楽しそうね」
「コレを楽しそうに見えるなら眼科を紹介した方が良さそうだな」
「心配してくれてありがとね。そうそう、ユダさんご飯全部食べてくれたわ、体調も大丈夫そうね」
「そうか、食えるなら尾根越えも問題無いだろう」
体調が悪い者を待つ余裕は無いが、かといってこの村に置いていくことも出来ない。リリスの話を聞いて一先ず安心しコーヒーを飲み干した。
「ったく、リリスさんの手を煩わせるなんて……」
「うん? ロニはやっぱり彼が気に入らない感じ? 素性明かさないんじゃ仕方ないだろうけど」
核心を突こうとするジョブスの質問にロニは迷いの表情を見せる。