朝食と後片付けを済ませると、カイルとリアラは早速村ヘ出た。リリスは朝食を持ってユダの所へ行き、残ったエミリオ、ジョブス、ロニの3人は食後のコーヒーに舌鼓を打っていた。
「やっぱり朝から辛いのはキツイって……リアラちゃんのだけ辛さ控えめだった事に陰謀を感じる、美味かったけどさ」
「孤児院に居た頃は朝からマーボーカレーとかありましたけどね」
「マジかよ……総帥は平気……ですよね、朝からホールいける口ですもんね」
「甘味と辛味を一緒にするな」
心外だと言わんばかりの反応だが、流石にロニも何か違うと思ったのか意見する。
「いや、朝から甘い物もキツイと思いますけど……」
「甘い物は別腹と言うだろう」
「何だろうね、総帥は甘味が絡むと天然が入るのかな」
甘いコーヒーを飲む男をジョブスは生暖かい目で見て笑い、そして訊く。
「ところで、いい加減ブラック飲めるようになりました?」
「アレは飲み物じゃない」
「世の女性方はこういう所が可愛いとか言うから分からん……顔か、やっぱり顔なのか、流石セインガルドのば……」
過去の通り名を声に出そうとした口は隻眼に睨まれ動きを止める。
「どうしたんです、ジョブスさん」
「いや……やっぱり世の中不公平だなって……って、こんな卑屈になってる場合じゃないんだって。ほら、尾根のルート確認しましょうや」
言葉通り気を取り直しテーブルに白雲の尾根の地図を広げた。坑道はやや入り組んでいたが、ノイシュタット方面に続く道は限られている。
「ま、どうせ勾配気にせずに最短ルートでしょうね」
「当たり前だ」
「男らしくて羨ましくなってきますよ。まあ若いのが多いから勾配なんてなんのそのだけれども、問題はモンスターかなァ……あの辺りは霧の土地柄な上に厄介なの出るから」
「晶力が具現化した事による不定形モンスターか……外郭崩壊をキッカケに随分と増えたものだ」
おかわりのコーヒーに大盛りの砂糖を入れエミリオは言い、自分の腰に身に着けているレンズに触れた。目には目をとでも言うべきか、不定形モンスターを倒すには晶力を意識的に具現化する才能が必要になる。