「あの、辛くなったりはしませんか、答えが見つからなくて……」
「辛いだろうな、だが諦めればそれまでの時間が無駄になる。それも私だけの時間だけではない、私の考えに賛同した者達の時間にも無意味の烙印が押されるだろう」
「無意味……じゃあ、私が諦めたら……」
それは本意ではない、焦りと憂いの表情がそれを語っている。その気持ちをよく理解しているエミリオは何気無く呟いた。
「ま、コレはある男の受け売りだがな。諦めるという事を知らない、猪突猛進で、疑う事すら知らない男の」
「……それって、何だかカイルみたいですね」
本当にそう思ったから言ったのだろう。しかしエミリオは一瞬面を食らった様な顔をした後、声を殺し笑った。
「エ、エミリオさん……?」
「フフッ……すまん、やはりそう思うのかと思ってな」
「どういう、ことですか?」
何が何だかさっぱり分からないリアラは当然どうしたらいいのか分からず、ただただ目の前で笑っている男を見て戸惑っている。
その視線を受けながら紅茶を飲み己を落ち着かせてから彼は理由を話す。
「その男というのが、カイルの父親だからな」
「え……じゃあ、スタンさんの事だったんですか?」
まさかの理由にリアラは逸る気持ちを抑え、より一層真剣に話に耳を傾けた。
「ああ、世間はアイツをどう見ているかは知らんが、私からすればアイツは単なるお人好しに過ぎない」
世間では英雄を纏め上げ世界を救った完全無欠の大英雄と謳われている男の話をする彼の目は優しい。その雰囲気から如何にその者かわ大切な存在なのか窺い知ることが出来る。
そして同時に抱いた疑問を、自然な流れでリアラは投げ掛けた。
「あの、カイルのお父さんって……」