「お帰りなさい」
「……ああ」
何時もと変わらぬ対応を受けながら紅茶を手にし、エミリオは2人に先程の事を話す。温かい紅茶は、慣れ親しんだちゃばのアジアだった。
「……そう……エルレイン、か……18年前の天上王と違うのは、世界規模で支持がある事ね」
「厄介だよなァ……宗教絡みの争いはなかなか鎮火しないから。それにバルバトスの出所もやっぱ気になるな……戦闘力はともかく、あの言動はエルレインが絡んだからなのか、元がそうなのか……」
リリスの意見にジョブスは溜め息を吐き紅茶を飲む。話し終えたエミリオは空になったカップに自分で紅茶を注ぎ、窓の向こうにある月を見つめた。
「総帥、これからどうするんです? エルレインとバルバトスもそうだし、リアラちゃんやユダについても現状維持ってわけにもいかんでしょう」
「2人については更に中央を払うくらいしか今はな。どちらもエルレインと繋がりがあるいじめ、下手に史劇してしっぺ返しを食うのも面白くない」
「うん、そうなっちゃいますよねェ……。ハァ、これってボーナス出るんかなァ 」
「結果次第だな」
非常に現実的な企業の顔に軍人は疲れた表情で項垂れる。
そこへ一般人を代表してリリスが疑問をぶつけた。
「あら、軍人さんがそんなじゃ税金払ってる国民が可哀想じゃないかしら」
「軍人だって人間ですぅ、ボランティアで人助けしてるんじゃないんですぅ」
機嫌を悪くした子供の様に反論する軍人に対し返されたのは、紛れもない一般人の笑顔。
「あらあら、私がセインガルド人だったら一発くれてやるのに」
「それは勘弁してください、洒落にならんから」
苦笑いで答えるジョブスだが目は怯えている。まだ茶化す事が出来る程度には余裕があるのだろう。
そんな事を考えながら頭の中で状況を纏めているエミリオは、不意にリリスへ質問を投げ掛けた。
「リリス、お前はユダをどう思う」
「うーん? そうね……悪い人、ではないと思うわよ? かといって良い人というわけでもないけれどね。例えば善悪が曖昧な子供……みたいな」
「やっぱり田舎に篭らせとくの勿体ねェよ……」
彼女の人を見る“目”に言葉通りの意味が隠った溜め息をジョブスが溢せば、軍人を唸らせる一般人は微笑んだ。
「うふふ、私はただの一般人よ?」
“ただの”一般人は一転して非常に落ち着きのある表情で英雄に質問を返した。