10
 ユダはそんな彼を見てから視線を逸らしつつ立ち上がった。しかしすぐに体勢が崩れ、倒れそうになるのをエミリオが抱き止める形で回避された。


「……っ……触るな……」


 胸を押し離れようとするユダだが、その腕には全く力が入っていない。顔色が悪く、衰弱している様に見えた。


「エルレインに何をされた、と訊いても……お前は答えないのだろうな」

「……よく、分かって……いるじゃないか……」


 分かってしまうのは、“彼”が以前の“自分”に似ているからなのか。

 エミリオは支えになりながら体勢を変え、立つ事すらままならないユダを背負った。


「……屈辱、的……だな……」

「そう思うなら自分の身体を大事にしろ。ああそうだ、この様をカイル達に話すのも一興だろうかな」

「……嫌な……男……」


 そう小さく呟いた声に安堵と、底の見えない悲哀を彼は感じながらリリスの家に向かい歩き出す。背中からは間隔が一定の寝息が聞こえ、少し安心する。


prev next

bkm

[back]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -