ユダはそんな彼を見てから視線を逸らしつつ立ち上がった。しかしすぐに体勢が崩れ、倒れそうになるのをエミリオが抱き止める形で回避された。
「……っ……触るな……」
胸を押し離れようとするユダだが、その腕には全く力が入っていない。顔色が悪く、衰弱している様に見えた。
「エルレインに何をされた、と訊いても……お前は答えないのだろうな」
「……よく、分かって……いるじゃないか……」
分かってしまうのは、“彼”が以前の“自分”に似ているからなのか。
エミリオは支えになりながら体勢を変え、立つ事すらままならないユダを背負った。
「……屈辱、的……だな……」
「そう思うなら自分の身体を大事にしろ。ああそうだ、この様をカイル達に話すのも一興だろうかな」
「……嫌な……男……」
そう小さく呟いた声に安堵と、底の見えない悲哀を彼は感じながらリリスの家に向かい歩き出す。背中からは間隔が一定の寝息が聞こえ、少し安心する。