遂に自己紹介をし握手を求めたが青年はもう溜息すら吐かない。
彼は差し出された少年――カイル・デュナミスの手を見ていた。
「……この手は」
「握手」
「…………」
応える事も拒否する事もしない無表情の沈黙。
それを破ったのは3人の中の誰かではなく、此処には居ない誰かの足音だった。音は小さいが、少しずつそれは大きくなる。
「やべ……コッチに来る……!?」
「ど、どうしよう……!」
声を潜め慌てる2人に彼は告げる。
「奥に地下水路への梯子がある、そこを進めば外に出られるかもしれん」
「地下水路? ……ああそうか、ダリルシェイドから遠くないしな此処……」
「く、来るよ2人共っ」
「焦るな、隣の部屋にお前達の武器が置いてある……さっさと回収して行くぞ、静かにな」
言われた通りに2人は閉じ込められた部屋の隣のドアを開けた。元々鍵は無く、そもそも大事な物を置かない部屋なのか埃が溜まっている。
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bkm
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