「……っ……は……」
何かを吐き出す様に呼吸をし、ユダは完全に力を抜いた。それに伴い多少警戒しながらもエミリオは腕から手を離し彼の上から退き、傍に腰を降ろす。
「大丈夫か?」
「……何で、……アンタが」
起き上がらず横になったままの問いにエミリオは溜め息を溢した。
「この辺りには無い気配がしてな……来てみればお前が倒れていたわけだが……」
「……フン……それは、運が悪い事に、な……」
起き上がらないのではなく起き上がれないのではないのか、もしそうならば一体ここで何があったのか。未だ推測であるが、己の中で確信を抱いている自分の考えを彼は告げる。
「エルレイン、だな」
「こんな所に、神団を支配している女が現れるわけ……」
「最初に会った時に感じた気配は覚えている。……それに、此処に現れたかといって、それが実体とも限らんだろう」
「……想像力が豊かで、感心する」
それはエルレインの存在を認めたと判断してよいモノだろうと、震えている手で身体を起こす青年を見て更なる確信を得た。その間に手を貸さなかったのは、拒まれる事が分かっていたから。
それを分かった上で何を切り出すべきか迷っていると意外にもユダから話は切り出された。
「リアラの、気配を……追ってきたらしい。やはり2人は何かしらの繋がりがあると言って、いいんだろう」
「なら更に注意を払わなければな……。だが、今回用があったのはお前のようだが」
「……言っただろう奴には“借り”があると」
それ以上彼は語らない、これ以上触れるなという事なのか。無表情だが重い感情が感じられる。
しかし、こうして断片的でも話しているという事はエミリオに協力するつもりはあるのだろう。それを彼は無意識に近い確信で信じていた。
「……奴は、一体何を企んでいる」
歯を食い縛り、低く青年は呟く。エミリオに言ったわけではないかもしれない、独り言の様なモノだろう。ただ、そこに憎悪の様なモノを感じた事がエミリオは気になった。
まるで、エミリオがバルバトスに抱く感情の様に。
「……スタン・エルロンを“始めとした”英雄を殺して回らせて……地位の確立だけが目的ではない筈だ……」
「…………何だ、と?」
「え……?」