「恐れているのですか、全てが白日の下に曝される事が」
「……っ!?」
強張る彼女の表情に女はほくそ笑む。
「裏切りという罪は、貴女の想像以上に貴女自身を苦しめている様ですね」
「黙れ……! そんな事、言われずとも……!」
「フフ、貴女は頭の良い方ですからね……」
そう言って、ゆっくりと手を差し伸べた。
「だから、私と共に行きませんか……? 私ならば、その苦しみを癒す事が出来ます」
「この期に及んで……っ」
「例えば、この様に」
剣を握る彼女の背後に“何か”の気配が現れる。だが何故か身体がその行動を忘れてしまったかの様に振り向く事が出来ず、それとの距離は縮められた。
そして、彼女の身体は優しく抱き締められる。
「え……」
「貴女の望みを、叶える事が出来る」
望みと、女は言う。
彼女はその意味を理解はしていた。
「違う……」
「いいえ、それが貴女の望み、貴女の幸せ」
「違う、違う違う違う違う違う!! 私はこんな事望んでいない!!」
だが剣を落とし、頭を抱えそれを否定した。
「己を責める必要はありません。救いを願うのは、人ならば抱いて当然の、感情です」
「黙れ!! 貴様に何が分かる!!」
否定し、そして叫ぶが、その視界は敵を捉えない。手で己の顔を多い、恐怖を隠そうとしていた。
「私に幸福なんて必要ない!! 裏切り者に、そんなモノ……!!」
「それは本当に貴女の言葉なのでしょうか……苦しみ続けた貴女には、充分幸福を得る資格があると思いますが」
「黙れェ!!」
裏切り者は温もりを否定した。