「でさ、……えぇっと……」
「……名前か?」
「うん」
頷く少年から眼を逸らし彼は何故か口を閉ざす。その時間十数秒の短いものだったが、青年の警戒心を増幅させるには充分だった。
そこへ彼は静かに告げる。
「僕には他人に名乗る名前なんて無い……好きに呼べばいい」
「え……?」
「名前が無いんじゃなくて、ただ名乗りたくないだけだろ? 強いて言うなら“自分は怪しい”って名乗ってるもんだぜ」
「フン、違いない」
あっさりと肯定する彼に青年は更に苛立ちを見せるが、その間に少年は入り彼に向かい言った。
「じゃあ、ユダって呼んでいい?」
「ユダ……?」
「うんっ」
屈託の無い笑顔で少年は頷く。驚いているらしい彼はそれを見つめ、その後微笑を浮かべる。
「べつに構わない……好きに呼べと言ったからな」
「うん、よろしくユダ。あ、俺はカイル・デュナミス!」
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bkm
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