不穏な空気を漏らしているキッチンから戻ってきたリリスは、プリンが乗せられていた皿が全て空になっている事に笑顔を見せた。


「まあ、綺麗に食べてくれて嬉しいわ」

「美味しいから当然だよ! それに出された物は残さず綺麗に食べるのがマナーだって母さん言ってたし!」

「んー何だか別の意味がありそうね。とまあそれは置いといてと、ユダさんシャワーを浴びてきたらどう? 疲れを取ってもらおうと温めたんだけど、キッチンの方はまだ時間かかりそうだし」


 リリスからの申し出を聞いたユダはカイルが賛同する前にやんわりと首を横に振る。


「僕は最後でいい」

「遠慮しなくていいのに。私は後片付けがあるし、他の男性陣はアレだし、どうせ空いてるんだから」

「なら、カイルを先にすればいい」

「カイルにはキッチンのアレを止めてもらいたいのよ」


 どうしても彼を先にしたいという考えを感じたらしいユダは訝しげにリリスを見るのだが、浮かべている笑みは全く変わることはない。それどころか彼の腕を取り立ち上がらせ、何処から取り出したのかタオルを渡す。


「ほらほら遠慮しないで、色々あって疲れてるでしょう?」

「いや、だから僕は……」

「疲れてる、でしょう?」

「…………」


 変わらない笑顔、しかしそこには確かに、先程までは無かった“圧”がある。しかし――案の定とも言えるが――カイルは気付いていないらしく、叔母に賛同していた。


「そうだよユダ、お湯もタダじゃないから入れる人から入った方が絶対良いしさ」

「あらあら、意外とお母さん似な所もあるのね。というわけで、無駄にしない為にも入ってちょうだいなな」

「……ハァ」


 青年は項垂れながらも頷き、リリスに背中を押されながらその場を後にした。


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bkm

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