「ね、ユダは好きな食べ物はある?」
「無い」
「じゃあリリスさんのマーボーカレーは?」
「……悪くはない」
用意された食事を全て平らげた後、デザートにと出された冷たいプリンを食べながらカイルはユダへ質問をしていた。される側は至極面倒そうにしているがスプーンは進んでおり、退席することはなく溜息を交えながら答えている。
その様子をキッチンから聞こえるリリスやロニ、ジョブス等の声を聞きながらプリンを食べ二人を見ていたエミリオに、突然思い出した様に質問の矛が向けられた。
「そういえば母さんに聞いたんだけど、このプリンのレシピっておじいちゃんのなんだっけ?」
「ん……ああ、母……つまりお前から見た祖母の為に作ったらしい。相当な甘党だったみたいだからな」
「そうなんだ、じゃあエミリオさんは母親似ってことなんだね」
「……何故そう思う」
わざわざ訊く必要は内面と分かっている彼だが、訊かずにはいられない。キッチンの方から笑いを堪えている気配がするが今は気づかなかった事にした。
そして当然、そんな男のプライドの様な意地の様な葛藤を知る筈もない少年はプリンを食べつつ素直に話した。
「母さんがさ、エミリオさんは実は甘い物が好きなんだって」
「おのれルーティ……!!」
姉の性格を考えれば面白半分で話したのは想像に容易い。そしてキッチンから聞こえた笑い声を聞いて彼はプリンを完食し遂に腰を上げ、声の主に会いに行った。
僅かながら目尻を引きつらせていた叔父を見送りカイルは再びユダに声を掛ける。
「ユダ、甘い物は?」
「美味い物ならな」
「じゃあこのプリンは好きになってくれたんだねっ」
「……フン」