呆れと尊敬が入り交じった言葉をジョブスは吐くが案の定、ロニに届くわけがない。彼は頭の中の引き出しを全て開け、持っている誉め言葉を存分に使いながらスプーンを進めていた。
カイルは早くもマーボーカレーをおかわりし、エミリオを失笑させた。
「よく食べるな、お前は」
「だって美味しいんだもんっ、次何時食べられるか分からないし!」
「ああ、やっぱりバッカスさんが羨ましい……!」
「知らない方が良い事もあるよな……」
悟りの表情で呟いた年長者は野菜を口に運んでいる。リリスにそれは届いたが彼女はただ笑っていた。
そして予想通りユダだけは会話に参加せず黙々と食べている、と思いきや不意に空になった皿を差し出す。
「あら……おかわり?」
「……ん」
キッチンに行くリリスを除いた皆は驚いていた。完食はまだしも、まさかおかわりをするとは誰も思っていなかったのだ。
そんな反応に対して彼は不機嫌そうに口を開いた。
「……何だ」
「いや……意外だなと思ってよ……」
ロニの呟きに、ユダは半ば吐き捨てる様にして返す。
「口に合った物を求めてちゃ悪いか? それにそいつが言ったんだろう、次何時食べられるか分からないと」
「……うん!! そうだよね!!」
彼が自分と同じ意見を持っているのが嬉しいのか、カイルの笑顔はとにかく明るい。そしてそれは、戻ってきたリリスも同じだった。
「フフッ、嬉しいわ。作る側としてはおかわりをしてくれるのが一番の褒め言葉よ」
「俺もおかわり!!」
対抗意識なのかどうかは分からないが、瞬く間に皿を空にしたロニは叫ぶ。それに対してカイルが溜息を吐いたのは見るまでもない。