ある程度彼の過去の事情を把握しているエミリオは弱めに足を蹴り、ロニとばまた別方向のスイッチが入った彼を黙らせる。当然ながらカイルは大人の話を理解していないが、それでいいのだと心の内で安堵の息を吐いた。
そんなタイミングを知ってか知らずか、リリスは戻ってくる。
「あら、何か楽しい話をしていたの?」
「単なるモテない男の子卑屈合戦だ」
「まあ景気悪い話ね……じゃあ空気を変えるついでに、カイルとロニとジョブスさんでお買い物に行ってきてくれないかしら。せっかくだからマーボーカレーを作ろうと思ったんだけど、具材やスパイスをちょっと切らしてて」
「行きます!!」
真っ先に反応するのは言わずもがなロニ。次は目が輝いたカイルだった。
「はいはい行きます! リリスさんのマーボーカレーすっごい久しぶり!」
「見事に色気と食い気で分かれてるなこの兄弟は……」
しかしそれでも息は合うのだと感心しつつ、2人の若者をジョブスはリリスからメモと代金を受け取る。