彼女の話にロニは静かになり、ジョブスも興味深そうに耳を傾けている。
「でもね、ある日、ホント何でもない普通の日、バッカスと話をしてたらふと思ったの、“あ、この人となら家族になってもいいかも”って」
「え……好きになったとかじゃなくて?」
「ええ、ホントに前触れなくそう思ったのよ」
話している本人でも未だ不思議なのか首を傾げ失笑していた。その様子にカイルとロニは顔を合わせたが、当然納得出来る意見が思いつくわけでもない。
それから溜息を吐いたのはやはりエミリオだった。
「お前が結婚すると聞いた時は流石に私も驚いた、相手がバッカスだという事も含めてな」
「ですよねー、リリス程の美人さんなら嫁の貰い手結構見つかりそうなのに」
調子よく笑うジョブス、すかさずリリスが良い笑顔で問い掛けた。
「じゃあ、私が独り身だったら結婚してくれました?」
「ハハハ、ご冗談を俺には勿体無い」
ロニはジョブスの返答に同意する様に頷いているのだが、恐らくリリスに対する根本的な考え方が違うだろう。だからジョブスの口元が引きつっている事に気付かない。