「ジョブス! リアラを運んでくれ!」
「はいよー」
気の抜けた声を返しやって来たジョブスは慎重にリアラを背負う、一応相手が少女である為気を使っているのだろう。そしてやはり心配そうなカイルが寄り添う。
ジョブスが呼ばれた事で自然とロニも駆け寄り、直ぐ様エミリオから指示が降される。
「ロニは荷物を頼む、リリスを頼るぞ」
「リリスさん!? あのリリスさんですか!?」
カイルとはまた違う眼の輝き、理由は考える必要も無い。
「私の知り合いでリリスは1人しか居ない」
「おっしゃ分かりました! 何人分だろうと運びますよォ!」
単純明快、しかし動機が不純。
颯爽と去っていく青年の背中を、ユダが冷たい眼で見送っていた。恐らくリリスという人物などの様な人なのか察しがついたのだろう。
「まったく……コングマンをギッタギタにする女の何が良いんだか……」
彼の嗜好が理解出来ず溜息を吐くとユダと眼が合った。数秒程視線を交えた後、ユダは甲板から降ろされたスロープに一人進み下船する。