深々と頭を下げる船長だったが、エミリオの視線はカイルを捉えていた。それに気付いた船長は失笑しながら体勢を戻し、そこへ戻って来た船員の報告を受ける。
「ジルクリスト殿、下船の準備が出来た様ですよ。これからバタバタするんで見送りは出来ませんで……道中お気をつけて」
「あ、そうか……世話になった、感謝する」
「いやいやそれは……なんてキリが無くなりますなァ」
「フフ、そうだな」
笑みを交わした後船長と別れたエミリオは移動し、リアラの手を握るカイルの肩を叩く。その頃には客人の姿は無く、あの騒ぎがまるで夢の様にさえ思える。
「カイル、船を降りるぞ」
「え……ど、どこに行くんですか?」
状況が動く事に少し不安を抱いたのか、彼の表情は素直にそれを見せた。だからエミリオは、その不安を取り除く為に微笑を浮かべる。
「此処からならリーネが近い、リリスの所に行くぞ」
「リリス……リリスおばさんの所……!?」
素直、若しくは単純という言葉が似合う笑顔。それが彼らしさだとよく知る男は頷いた。