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 今は船員達の誘導で乗客は部屋へと戻っていき、甲板には少しずつ落ち着きが戻りつつある。

 その際にリアラに寄り添うカイルにお礼の言葉を残して去っていく者も居た。戸惑っているカイルだが、何処か嬉しそうに笑っている様にも見える。

 ジョブス、ロニ、ユダの3人はそれぞれ船の周りを警戒していた。


「……船長、ハイデルベルグへ向かう場合、船が出るのと尾根を越えてノイシュタットに向かうのとではどちらが速い」

「この辺りを熟知してるジルクリスト殿なら尾根を越えた方が速いでしょうなァ。修理には時間掛かるし、この港を元々ルートに入れてる船はあまり居ませんし、フィッツガルドの南北を繋ぐ貴重な定期船は不幸な事に今はノイシュタットだし、他の船を出そうにも人員は修理に割かれるでしょうから……」


 つまり今すぐに出せる船は無い。

 この現実にエミリオは無意識に額を押さえ、溜息を吐く。


「リーネで休んで、尾根を越えるか……やれやれ、前途多難過ぎるな」

「ま、助かっただけでもヨシとしましょうや。ジルクリスト殿には感謝しきれませんよ」


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bkm

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