「その時は、どうやって退けたんだ」
きっとこれから先に起こりうるだろう可能性への対策の為の質問。しかしそれに答えるには悔やむべき過去に触れなければならない。
「……答えたくないなら、答えなくていいんだが」
その複雑な心境に気付いたのかユダは表情こそ変えないが、質問を撤回する。
だが彼は言った。“答える”ではなく、“打ち明ける”形で。
「文字通り命と引き換えに奴を退けた奴が居た。……あの時、アイツが止めを刺したと確信していたんだがな……」
何故“打ち明けている”のか、本人は不思議に思う。案の定相手は反応に迷っているのか言葉を詰まらせている。
やはり話すべきではなかったと後悔する目の前でユダは腰を上げ、口を開く。
「アンタは……、……!!」
ユダが姿勢を低くすると同時に、エミリオはテーブルに掴まった。直後、船が不自然に大きく揺れ、部屋の外から悲鳴が上がる。
「この揺れ……まさか……!」
「チッ……厄介な……」