答えない事は質問する前から分かっていた。しかしそれでも質問をしたのは、彼と言葉を交わしたかったから。
“自分”に似ている彼を知りたかった。
「お前は……バルバトスとの交戦経験はあるのか?」
「いや、アレが初戦だ。……あんな化物、頻繁に出会してたまるか」
「そうか……」
確かにその通りだと思っていると、ユダから質問が返される。
「アンタはどうなんだ、随分とボロボロにされていたが」
「私は……」
心の内を悟られる事は誤魔化すべき、そう思ったがすぐに自分がそれを否定した。そして、彼には本当の事を伝えるべきだと主張する。
それに抗う事は、出来なかった。
「ある、な……敗北を喫したが」
「その時はどうだったんだ、奴の力は」
「……アレと比べれば、現実味があるモノだった」
「比べれば、か」
つまりどちらにしろ化物クラスである事には変わり無い、エミリオはそう言ったつもりであり、ユダもそう受け取っているだろう。