話を切り出した彼の微笑は、楽し気でもあり悲し気でもあった。
「その心当たりがあるのは寧ろ私の方だなと思ってな」
「……もしかして、18年前の事ですか?」
「ああ、神の眼を追って世界中を巡っていた頃……。今だから言ってしまうが、初めて会った頃、私はスタンが大嫌いだったんだ」
「え……!?」
スタンとエミリオは義理の兄弟である以前に、互いの背中を預け合う親友同士だとロニは知っている、だから驚く。
その反応は予想通りだったのかエミリオは失笑する。
「あんな世間知らずの田舎剣士、と思っていた。他人の事情を知らないくせに土足で踏み込んできる非常識な男だと思っていた。なのに、非常事態の中でもアイツの周りの空気は違っていて、自然と輪の中心に居て……私が持っていないモノを持っていて、そして邪険にしか扱わない私を仲間だと言って隣に立とうとする……能天気で図々しくて馴れ馴れしい、下に見ていた男に遂には嫉妬心さえ覚えた」