ドアの向こうから聞こえた若い男の声。
青年は身構え、少年は驚く。
「チッ……何時から居た」
『そうだな……俺が英雄だのなんだの、その辺りからか』
「殆どハナっからじゃねェか……黙って聞いてたってわけかよ」
『僕に気付かず勝手に喋っていたのはお前達だろう』
だが、と彼は続けた。
『聞いていてなかなか面白かった。神団の者に聞かれたらすぐに断罪だな』
「まるで自分が神団の人間じゃないって言い方だな」
『事実、僕は神団の人間じゃない』
「なら何でお前は此処に居るんだよ、教会の地下なんて神団の人間じゃなきゃ入れないだろ」
隠さない警戒心の言葉に、嘲笑を孕んだ言葉は返される。
『それはお前の常識でしかない』
「チッ……口では何とでも言えるだろ……」
『フン……その言葉はお前の隣に居る奴に言ってやれ』
「何……?」
“隣に居る奴”、それを聞いて少年は自分を指差した。
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bkm
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