笑う大人の男、冷たい眼でもう1人の大人に睨まれているが気にする素振りは全く無い。それどころか有言実行とばかりに、ロニをタオルケットで巻き床に転がした。
その間、彼は語る。
「酒っていうのは怖いモンでな……カイル君も大人になったら気をつけなよ、後悔って絶対先に立っちゃくれないから」
「ん、うん……」
揺れる船に合わせて転がる彼を見て少年は頷く。
次に大人を語るジョブスが矛先を向けたのはつまみを口にしているユダだった。
「そういやユダは酒どうなんだ? 強い方?」
「……さあ」
「ドライな返しをどうもってね。ま、総帥には絶対敵わないだろ、……ウチの奴等全員負けたもん」
「お前達が腑抜けなだけだ」
そう言ってワインを飲む企業のトップ、その姿は様になっている。それをカイルも感じたのか、感心の眼と共に訊いた。
「エミリオさんって、昔からお酒強いの?」
「この人が酔ったトコ見た事無いねェ」
何故か得意気に答えるジョブス。しかし特に反論意見は無いのかエミリオは黙々とグラスを傾けた。