なるほど、と納得したロニはエミリオを見た。彼はまた溜息を吐き、ジョブスに笑われている。
「才能か、悪癖か……本人次第といった所だろう」
「総帥手厳しいなー」
「甘くする必要が無い」
彼等の会話が不思議に思ったリアラは首を傾げた。
その頃カイルは、部屋を出てすぐ甲板に彼を見つけ急いで駆け寄る。周りには船員が数人居るだけの静かなそこで、彼は海を眺めていた。
「ユダっ、夕食の時間だよっ」
「……、そうか」
振り向かず、返事だけをしてユダはそこから動かない。横に立ってみると、彼が海ではない何処かを見ている事にカイルは気付く。
「……ユダ……あの、さっきはごめ」
「僕に、誰かを想う資格は無い」
「え……?」
謝罪を遮った、先程とは違う憂いを帯びた言葉を聞いたカイルは彼を見つめた。
「だから大切な人なんて居ない、僕は自らそれを捨てたんだ」
「どうし、あ……」
つい訊いてしまったと後悔するが、目の前の青年は何かを見つめたまま答える。