ほんの一瞬だけエミリオが反応したが、気付いたのはジョブスだけ。
ユダは呆れ果て、近くに置いてある椅子に腰を降ろした。
「恋人なんて居ない、居ても邪魔なだけだ」
吐き捨てるかの様な言い方にカイルは一瞬だが押し黙ってしまう。しかしそれは拒絶を感じたからではなく、言葉の裏に重いモノを感じたからだった。
だから、自分の言葉を素直に伝える。
「でもユダって、恋人はともかく大切な人とかは居るんじゃない?」
「……はあ?」
的外れもいい所だと言いたげな溜息をユダが吐くが、カイルも譲らなかった。
「ロニも言ってたけど、ユダって誰かの為に行動してるって感じがするんだよね、エミリオさんみたいに」
「馬鹿馬鹿しい……単にお前が井の中の蛙なだけだろう」
「いの、なか……? よく分かんないけど、とにかくエミリオさんに似てるんだよ」
「……世間知らずも大概にしろ」
立ち上がった彼は冷たい眼をしていた。
「お前の観点は自分の叔父を貶めるだけだ」