10
 ほんの一瞬だけエミリオが反応したが、気付いたのはジョブスだけ。

 ユダは呆れ果て、近くに置いてある椅子に腰を降ろした。


「恋人なんて居ない、居ても邪魔なだけだ」


 吐き捨てるかの様な言い方にカイルは一瞬だが押し黙ってしまう。しかしそれは拒絶を感じたからではなく、言葉の裏に重いモノを感じたからだった。

 だから、自分の言葉を素直に伝える。


「でもユダって、恋人はともかく大切な人とかは居るんじゃない?」

「……はあ?」


 的外れもいい所だと言いたげな溜息をユダが吐くが、カイルも譲らなかった。


「ロニも言ってたけど、ユダって誰かの為に行動してるって感じがするんだよね、エミリオさんみたいに」

「馬鹿馬鹿しい……単にお前が井の中の蛙なだけだろう」

「いの、なか……? よく分かんないけど、とにかくエミリオさんに似てるんだよ」

「……世間知らずも大概にしろ」


 立ち上がった彼は冷たい眼をしていた。


「お前の観点は自分の叔父を貶めるだけだ」


prev next

bkm

[back]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -