それから時間が経ち陽が沈みかけた頃カイルとリアラは戻って来た。2人は船旅を満喫しているらしく、少し興奮した様子で体験した事を話す。
「それでね、餌を貰った瞬間カモメがバーッて飛んできてさっ、人に慣れてるのか全然逃げないんだ」
「確か、カモメって海が身近にある人にとって大事な存在だって言ってたわね」
「うん、嵐が来るのを教えてくれたり、魚の群れが居る所を教えてくれたり……自然と人間ってこんな風に助け合うんだって思ったよ」
少年少女の表情には子供特有の明るさがある。それがどれだけかけがえのないモノで、守るべきモノであるのか、過去の自分と比べながらエミリオは耳を傾ける。
「そういえば上の方でユダがボーッとしてたなァ。船に酔ったのかと思って訊いてみたら、違うって言ってたけど……」
「それは、アレだな」
声が聞こえたドアの方を見ると、不適な笑みを浮かべ壁に寄り掛かるロニが居た。
「船に何かしらの思い入れ……例えば、昔恋人と船旅をした事を思い出したりして、アンニュイな気分に浸っているんだろう」
「ロニじゃないんだから……」