出航の合図であるベルが鳴り響き、エミリオと船長は急いで船に乗った。船内は船員達が忙しなく動き、甲板には皆に手を振り別れを告げている客が居る。そのに、カイル、リアラ、ロニが居た。
エミリオはこれから忙しくなる船長に部屋の場所を教えてもらってから別れ彼等に近付き、失笑混じりに声を掛ける。すぐにカイルは振り向き、満面の笑顔を見せた。
「随分はしゃいでいるな」
「だって、船旅初めてだからワクワクしちゃって! ね、リアラ!」
「うんっ、何だか凄く気持ちがいいわ」
港で感じるモノとはまた違う潮風、確かに気分が良くなるだろうと思いながら若い自分を振り返る。人間、苦手なモノでも何とかなるものだなと感慨深くなった。
ロニの眼が港や海ではなく、女性に向いているのは気にしない方が良いだろう。
様々な人を乗せた船は、汽笛を上げゆっくりと港から沖へその身を走らせた。
「船考えた人って凄いなァ、風の力でグングン進むんだから。そういえば、ロニは船乗るの……」
皆で振り向いてみれば彼はそこに居ない。