固辞する船長、だがエミリオは少々無理矢理気味に代金を手渡す。
「私は客だ、特別扱いされるのは遠慮願いたい」
「……分かりました、お代はいただきます。ただ、少しくらいサービスさせてくださいや、良いワインが手に入ったんですよ」
「ああ、頂こう」
心遣いを受け取り頷いた後、彼は船を見上げ興奮している子供達と、それを見守ったり呆れたりしている大人達に叫ぶ。
「ジョブス! 船が出るぞ!」
「はーい」
気の抜けた返事のジョブスは、皆を連れて船内へと赴く。その間もカイルとリアラの好奇心の眼は続いていた。
それを見送ったエミリオは船長に問う。
「最近、不穏な噂が立っているとか……」
「ああ、それですね……全く情報が無いんで何とも言えなくて……」
腕を組み、悩み、困る船長。大海原を走る指揮官がそうせざるを得ないのだ、エミリオには答えが出せる筈も無い。
だから出来る限りの意見を出す。
「少しでも不審な事があったらすぐに言ってくれ、出来る事は少ないが……一応海上船は心得ている」
「ありがとうございます、何事も無いのが一番なんですがねェ……」