「グリッドさんて良い人だよね」
「唐突にどうした……」
港へ行く途中、カイルの言葉にエミリオが首を傾げた。すると少年は見え始めた海を見つめる。
「凄い人だなって何となく思って。だって、母さんが話してたんだけど、アイグレッテを作る時グリッドさん凄い活躍してたって」
「活躍……そうだな、人を動かす……いや引き付けるのが上手い男だ。大局を見通せるわけではないが、不思議と注目が集まる」
「父さんとグリッドさんは知り合いだったんだよね?」
「ああ、ある意味腐れ縁というか……」
漏れる溜息、カイルにはその理由は分からないが、それが悪いモノではない様な気がしていた。
「父さんってやっぱり凄いなァ、世界中に知り合いが居るんだから。沢山の人と仲良くなったら英雄かな」
「さあ、どうだろうな……英雄の定義は1つじゃないからな」
「どういう事?」
「さあ……そこは自分で考えてみろ。港に着くぞ、荷物の点検をしておけ」