やや重い空気だが、グリッドだけは違った。
「おお、そうだ! 船と言えば最近嫌な噂があってな!」
「噂? どんな話だ」
流石に相手がグリッドと言えど聞き流せない話にエミリオはすかさず反応する。グリッドも珍しく真剣な表情を見せた。
「まだ確たる物証も無いから知っている者は少ないのだが、沖合いで不気味な影を見たという話が上がっているのだ。陸ならまだしも、海上だからな……一応許可された範囲内で武装はしているんだが」
「影、か……海上戦は厄介だからな……何も無ければいいが」
そんな心配を吹き飛ばす様に、カイルが明るい声を上げる。
「大丈夫だよ! 俺達ならどんなモンスターだってやっつけられる!」
「……前向きなのは評価しよう、だが海上戦を甘くみるな。これから私達が乗るのは客船、他の客が居る中での戦闘は想像以上に神経を使う。船を破壊せず、一般人に気を配り、かつ相手から眼を逸らしてはいけない、1つでも怠れば望まない結末を迎える事になる」