決して空気が悪くなったわけではないが、ユダが口を開いた事がキッカケで室内は少し静かになった。
それを変えたのはジョブス。
「じゃあ早速行きましょうや、善は急げというか何と言うか」
「ならジョブス、コイツ等を連れて先にグリッドの所に行っててくれ、露店区域に居るだろう」
「承知っと。そんじゃ行こうぜ若者達! あ、フィリア女史またその内にー」
フィリアに軽く手を振りジョブスは部屋を出た。若者達もそれぞれ軽く挨拶をし続くのだが、ユダだけは一礼すらなく去って行く。
その背中を暫く見ていたエミリオに、フィリアが少し緊張した様子で話し掛けた。
「エミリオさん、やっぱり彼の事が、気になっているのでは……?」
「見ず知らずの男だからな」
「確かにそうですが……私、初めて会った気がしないのです。それに、まるで……昔の貴方を見ている様で……」
「……生きていれば、そういう事もあるさ」
否定せず、彼はそう言った。