「……自分を棚に上げるというのはこの事だな」
「リオンさん……」
立ち上がったエミリオは心配を見せるフィリアに指示を出す。
「ジョブスの所に行って来る。悪いが戻るまでアイツ等を見ておいてくれ……」
「分かりましたわ」
微笑で引き受けるフィリアだったが、すぐに神妙な面持ちで小声での質問をする。
「大丈夫なのでしょうか……エルレイン側に勘づかれているというのは……」
「エルレインとバルバトスが繋がっているのなら、勘づかれていると判断してもいいかもしれん。ならば今更足を止めるわけにはいかない……リアラという、“聖女に近い雰囲気を持つ”イレギュラーがどちらに転ぶのか、確かめる必要もある。
出来れば真っ直ぐハイデルベルグへ向かいたいが、ノイシュタットにあるレンズと“アレ”を確かめなければ……」
揺るぎ無い信念、フィリアにはそれが痛い程に分かっていた。
「……私も出来るだけご協力致します。ただ、無理がたたって……なんて事は無いように……」
「ああ……繋ぎは頼んだ」
ただ、一瞬その信念の眼が揺らいだ。その瞬間視界の中に居たのは、呆れた表情を見せているあの青年。
「リオンさん……彼が、気になるのですか?」
「……行ってくる」
答えずに足を進める、まるで振り払うかの様にして。
「……今更何を……」
抱いたのは、過去に置いてきた“何か”。