「そ、それは困ります! 私、行きたい所が……!」
「バルバトスに顔を覚えられている以上、お前達を表で歩かせるわけにはいかない。奴の力をもう忘れたわけじゃないだろう? 少なくとも奴の動向が分かるまでは、ダリルシェイドで大人しくしておいた方が良い」
「……で、でも……」
エミリオの言葉と自分の意思、リアラがその間で揺れ動いているのがカイルは気付く。だから、叔父に意見する。
「エミリオさんっ、俺がリアラを守るから! だからせめて、その行きたい所だけでも行かせて!」
「馬鹿を言うな、ユダが現れなかったらどうなっていたのか思い出せ」
「それは……」
納得せざるを得ない、事実“あの”エミリオでさえ敵わなかったのだ。しかし 彼女の願いを叶えたい、諦めたくない。
あの男敵わない自分がどうしたら説得出来るだろう、悩む少年に助け船を出したのは彼だった。
「リアラ、お前は何処に行きたいんだ」
「え……その、ハイデルベルグ、です……ウッドロウ王に謁見したくて……」