英雄が言った父親の名に思わずカイルは声を上げそうになったが、彼女の話が続くと分かり堪え耳を傾けた。
「私は力を求めました、己の罪に向き合い償う為に……そして何より、スタンさんの力になりたかった……。それに応えてくれたのがソーディアン・クレメンテ……彼は“力を望む直向きな想い”が自分を呼んだと言いました」
英雄と共に世界を救った意思を宿す剣の話。リアラは当然、カイルもその話に少し夢中になっていた。
「クレメンテは世間知らずな私を信じ、知識は人の財産だと教えてくれた、大切な師……ならば私も、私を信じてくれる人達の為に前を向き歩こう……そうして、天に戦いを挑んだのです」
天と地の決戦、その結果は世界中の誰もが知っている。
ただリアラは弱々しく意見を口にする。
「でもそれは、フィリアさんにソーディアンを扱う資格があったから……だから……」
英雄になった、そう彼女は言いたいのだろうが言葉にはならなかった。それはフィリアは彼女が求めている英雄ではないからなのだろう。