つまり彼は己に課した指名を全うする為ならば何だってする、そう語る。
青年は鼻で笑った。
「流石、英雄様はよく考えていらっしゃる。それとも甘いのか? 人払いをするなんて、僕が行動を起こしたらどうする気なんだか」
「お前はそんな事はしないだろう」
「なっ……」
間髪入れず返された真剣な顔での言葉に絶句すると、それをエミリオは微笑を見せる。すぐに気付いたユダは歯を食い縛る。
「……ブラフか」
「お前は間者には向かない、感情の殺し方がなっていないからな」
「今のやり取りが計算の内だったら」
「これでも企業のトップに立つ身だ、それくらい看破する眼は持ち合わせている。未だ信用……とまではいかないがな、手を組む分には充分だ」
彼の言葉は真剣そのモノ、だがユダはそれを否定した。
「理解に苦しむな、企業が回ってきたのは単に運が良かっただけとさえ思える」
「実際運が良かったんだろう、人に恵まれていたからな」