「我が名はバルバトス・ゲーティア、覚えておくがいい……」
歪みの中へ男が消えると、その歪みも消えた。
「バルバトス、ゲーティア……」
カイルは呟き、そして我に返る。同時に彼が少年より速く、ジョブスが居るそこに駆け寄った。
「総帥!!」
ジョブスの呼び掛けにエミリオは答えない。どうやら意識を失っているらしく、その上呼吸が異様に小さい。
気道を確保する為にジョブスが体勢を仰向けにし、彼――ユダが身体に触れ容態を確認する。その間にカイル等は集まっていた。
「……肋骨が折れて……肺に刺さったのか……治癒術じゃ無理だ……!」
彼の診断にフィリアが僧兵達に指示を出す。
「早く医務室へ! 執刀は……」
「ま、待ってください!」
遮ったのは未だ手が震えているが、眼に力を込めているリアラ。彼女はユダの隣に膝をついた。
「私に……任せてください……!」
「リアラさん……」
フィリアが何も言わないという事で、誰もリアラを見守る。