10
「我が名はバルバトス・ゲーティア、覚えておくがいい……」


 歪みの中へ男が消えると、その歪みも消えた。


「バルバトス、ゲーティア……」


 カイルは呟き、そして我に返る。同時に彼が少年より速く、ジョブスが居るそこに駆け寄った。


「総帥!!」


 ジョブスの呼び掛けにエミリオは答えない。どうやら意識を失っているらしく、その上呼吸が異様に小さい。

 気道を確保する為にジョブスが体勢を仰向けにし、彼――ユダが身体に触れ容態を確認する。その間にカイル等は集まっていた。


「……肋骨が折れて……肺に刺さったのか……治癒術じゃ無理だ……!」


 彼の診断にフィリアが僧兵達に指示を出す。


「早く医務室へ! 執刀は……」

「ま、待ってください!」


 遮ったのは未だ手が震えているが、眼に力を込めているリアラ。彼女はユダの隣に膝をついた。


「私に……任せてください……!」

「リアラさん……」


 フィリアが何も言わないという事で、誰もリアラを見守る。


prev next

bkm

[back]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -