歯を食い縛りロニは押し返そうと前に体重を掛ける。カイルは競り合いの横から男に攻撃を仕掛けたが、その剣を片手で止められた。
「ガキが……」
直ぐ様刃を握った手は、柄を握る少年ごと振り上げ床に叩きつける。そして間髪入れず青年との競り合いに勝ち、空いた腹部に蹴りを入れた。当然のそれを受けた身体は飛ばされ、壁際に倒れる。
「ロ、ロニ……!」
早く何とかしなければと身体の痛みを堪え、カイルは立ち上がろうとした。その時フィリアは術を発動させる。
「エアプレッシャー!!」
男を中心に重力場が発生し拘束するのだが、足の一踏みによる衝撃で打ち消された。
その際に斧を奮った直後の隙をカイルは狙うも、それよりも早く斧が目の前を掠めた。気付いた時には、その手に剣は無かった。
「フィリア・フィリスの望み通り、逃げれば良かったモノを……」
「あ……」
動きを止めてしまった少年に向け振り上げられた斧と、男の笑み。
「俺の前で英雄を名乗った事を、冥土で後悔するんだな」
振り上げられた斧は、あとは振り下ろされるだけ。
「カ……カイル!!」
叫ぶロニと、漸く少し身体の自由を取り戻したジョブスが走り出す。
だが斧と彼等、どちらが速いかは考えるまでもない。