「リアラさん、貴女は逃げて……!」
「そ、そんな……!」
震えた身体の少女は、まるで祈る様にしてペンダントを握り締める。
ジョブスが立ち上がり男を止めようとするが、本能的に恐怖を感じているのか身体が言う事を聞かず歯を食い縛った。
そしてエミリオは、ままならない呼吸で術を使おうとする。
「フィリ、ア……!」
詠唱が出来ない、狙いも定まらない、頭は急かすのに身体が動かない。
“また”、何も出来ないままなのかと絶望を抱く。
「止めろ!!」
若い叫びと共に礼拝堂に飛び込んできたのは少年と青年。それを視界の隅に捉えたエミリオの眼が見開かれる。
「カイ、ル……ロ、ニ……!?」
何故此処に、そして同時に焦りが彼の思考を更に乱す。
止せ、逃げろ、そう叫びたいのに声が出ない。
少年の眼は怒りに満ちていたが、青年の眼には更なる怒りがあった。
「お前……よくもエミリオさんを!!」
親友の息子は既に剣を抜いている。